Report:2025年10月例会/ウクライナ 揺れる社会
JCL10月例会は10月2日、アジアプレスの玉本英子さんに「ウクライナ・揺れる社会」と題して、ウクライナ取材の報告をしていただきました。玉本さんは、アフガニスタン、イラク、シリアなどの紛争地を取材。ウクライナでは2022年夏から南部や東部地域の前線の町を取材してこられました。
<やまぬ戦火と追われる住民>2022年2月24日のロシア軍のウクライナ侵攻以降、戦火はやむことなく、前線地帯からの住民脱出が相次いでいる。前線が15km以内に迫ったら、子どもたちには避難指示が出される。連日、ミサイルと自爆ドローン「シャヘド」の攻撃が続いており、毎日数百発が撃ち落とされている。オデーサでは、1日に10回防空サイレンがなったが、毎回、10分から1時間、外壁から二つの壁を隔てた部屋に避難しなければならない。4月にはクリヴィー・リフの公園がミサイル攻撃を受け、子ども9人を含む19人が犠牲になった。翌日に訪れた公園では、住民たちが公園の遊具に花束やぬいぐるみを手向けていた。
<ドローンが変えた戦場>ドローンは「進化」し続けており、無線誘導は電波妨害を受けるため、新型の光ファイバー有線式のドローンが登場、ドローン下部にミシンの「ボビン」のような装置を付け、ごく細い光ファイバーを15km分内蔵している。そのため、最前線地帯は光ファイバーケーブルだらけで、放置された光ファイバーで鳥が巣を作っていた。
〈揺れる兵士の心情>前線で兵士に取材したが、領土奪還まで戦うのか、領土を放棄して「停戦」するべきなのか揺れている。「戦うべきだが兵士が足りない」「望まない形であっても政治的、外交的決断がいる」。政権に対する批判も語られるが、それを大きくするとプーチンの思う壺だという気持ちもある。占領された土地を取り返し、自分たちの世代で決着させなければ、子や孫の世代まで続くのではという思いを語る兵士も。
<自衛隊車両を追って>日本政府がウクライナに送った自衛隊車両(1/2tトラック)を継続して取材してきた。過酷な条件での使用でタイヤの摩耗が激しいが、現地では調達が難しくネットで探しているとのことだった。支援のあり方を考えさせられた。
<汚職・腐敗〜ウクライナの闇>ゼレンスキーと新興財閥オリガルヒの関係については、テレビドラマ『国民の僕』で人気を博したゼレンスキーが「汚職と闘っているのはポーズだ」との見方もある。国防省調達をめぐる汚職では1個12円の卵が68円になったり、戦闘服でも水増しが指摘されたりしている。独立ジャーナリストのユーリー・ニコロフ記者が妨害や脅迫の中で報道を続け、レズニコフ国防省の辞任につながった。戦時国民総動員令により18歳から60歳の男性は、3ヶ月に一度、軍に登録することが義務づけられ、登録したことを証明する書類(スマホ)を常に所持することも義務づけられている。街頭でも抜き打ちの検査が行われて、強制招集されることもあるため、家から全く外に出ないという人もいる。前線で戦う兵士からは不公平だとの声もあり、今までの一体感が薄まっているのではと感じた。
<双方で増え続ける兵士の犠牲>絶えない戦死、広がる悲しみ。2022年2月から2025年6月までで、ウクライナ軍6万〜10万人、ロシア軍20万〜25万人の犠牲者と言われている。いつまで戦わなければならないのか、市民は疲れ果てている。
多くのインタビュー映像と、ドローンにつけられた光ファイバー装置の実物なども見せていただき、多面的な報告で、質疑応答も含め有意義な例会でした。(G)
写真はードローンの模型(実物ではない)を使って説明する玉本英子さん。机上左側の黒い円筒形はドローンにつけられていた光ファイバーケーブルの「ボビン」(実物)
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